歴史上の中朝日関係と、現在の日米中関係は類似する?

中西輝政著「帝国としての中国」東洋経済
新報社、04年9月。

Chinaに関する歴史考察の本だけど、過去の
国際関係と現在の状況と、類比可能なものがある。

豊臣秀吉晩年の朝鮮侵略(目標としてはさらに先の
明攻略)は、単なる妄想と見たくもなるけど、Mongol
元帝国による侵攻への復讐の面もある?

秀吉側は、出兵前のKorea李氏朝鮮側との交渉で、
Koreaは高麗時代、Mongolの手先として対日侵攻
した、そのことの責任を取れと要求。

今度は日本軍の先導役になれ、と。Korea側は、
この交渉に関してすぐには宗主国に伝達せず。

他の非公式経路から交渉情報が漏れた後、明に
弁解。しかし明はKorea側の忠誠に疑念。

Koreaからの要請通りには援軍を送らず、和平に
際してKoreaを当事者から外して、日本と直接
交渉した。

China,Korea冊封関係と、現在の日米同盟は、
同様同質のものか、それとも別のものか。

中共が尖閣や沖縄への侵略姿勢を公言する現在、
気になるところではある。

Koreaは高麗、李朝を通じて、大陸China元、
明に対して、美女、処女、宦官、官僚秀才、
大量の人材提供をさせられた。

Korea側は、女子人材流出への対策として、
蛮習とされる異常早婚で抵抗。

Koreaは、清朝に対しては、不公平貿易で搾取
された。それでもKoreaは、Vietnamの様な、
対China面従腹背策を採ることが出来ず、事大
に徹した。

日本は、本来島国だけど、今後国際対処を誤れ
ば、Korea型半島国家に没落する恐れが無きに
しもあらず?

日本は大陸勢力と海洋勢力の境界、USA進出、
19世紀後半以降は西洋文明と東洋文明の境界。

この二重の境界性に如何にしてうまく対処する
かが日本の課題と見られる。

Marx流資本主義分析はどこが正しくどこが駄目なのか

「世界史の極意」続き。
著者は、Marx資本論を援用、資本主義の中核は
労働力商品化だとする。

賃金決定の3要素は、Marx流には、1に、労働者が体
力を維持するための費用。

2に、労働者が家庭を維持する費用。3に、労働者が
技術革新に合せて知識を獲得するための費用。

要するに費用Costの積み上げ、市場原理は無関係。
だから労働者は基本として最低限の給料しか受取れ
ず、搾取される。

蛇足するに、現代のGlobal資本家は、女権主義と結託
するなどして、家庭維持の費用を節約し、搾取を強化
する。

労働者が、搾取を受けずに正当な賃金を獲得するには
どうすれば良いかの課題に対して、Soviet型社会主義
共産主義は、国家による強制労働が、資本家による
搾取よりも労働者のためになる、の倒錯。

資本家による過剰搾取で社会の資金循環が歪み、それ
が限界に達すると破綻して経済恐慌になる。

強硬で混乱が生じ、多くの資本家たちは過剰利潤を吹
き飛ばされるにしても、権力構造の基本が変更される
ことは無い。

20世紀国際覇権国USAは、朝鮮戦、Vietnam戦、湾岸戦、
Iraq戦と、15年程度の間隔で戦争をくり返し、浪費で
恐慌を抑制した。

Iraq戦争から15年以上が経過した現在、気持ち悪い
面が無いことも無い。

現Trump政権が、戦争のやり方を外交戦や貿易戦、
情報戦に変更し、軍事戦を抑止すると期待したい。

労働力商品化を主導したのは、麦作農地を潰し、牧場
に変更し、羊毛毛織物工業を発達させ、元農民らを
工場労働者化して搾取した英国。

でもMarx流歴史観は、搾取の元凶が何かを見破ること
が出来ず。

近代産業化の歴史過程を全否定して農業時代に
回帰することも出来ず、頓珍漢な処方箋を出して失敗。

19世紀英国自由主義は印度を隷属させ、冷戦後USA新自由主義は日本を叩きのめした

佐藤優著「世界史の極意」NHK出版新書。

著者は、類比Analogyとしての歴史を強調。右翼
主流派は物語Storyとしての歴史History(His story
はいんちき語源説)を強調するのと一線を画す。

元神学Theologyの徒たる著者は、神学の基本の方法
はAnalogyだとし、その方法を歴史に適用する。

今の知識人は、Analogyを駆使して大きな物語を作り、
Hate speechの様ないんちきなものを封じ込めるべきだ。

安倍政権はAnalogy思考が不足する。だから副総理が
Naziの手口に学べなどと問題発言して、国際社会から
孤立する、と著者は批判。

著者はLenin帝国主義論を援用、19世紀から20世紀に
かけての、自由主義から帝国主義への流れが、20世紀
終盤から21世紀にかけて再現したとする。

19世紀英国は、産業革命により、それ以前の国家介入
型重商主義から脱却。

近代工業で大量生産したものを大量輸出、押売りする
ための自由主義自由貿易に移行。

でも繊維工業で成功した英国は重化学工業への移行が
うまく進まず、Germanyの追上げを許し、1870年あたり
に帝国主義、複数勢力による闘争状況に移行。

そして2度の世界大戦による大破綻に陥る。戦後資本主
義諸国は、社会主義の脅威から体制を守るために国家
介入強化。

ただし著者はこれ(福祉国家)を新重商主義と呼ばず、
Marx主義流に国家独占資本主義とする。

冷戦終了、Soviet社会主義崩壊で、USAは新自由主義化。
金融の力で日本を2流国に叩き落とした。でも08年
Lehman危機で破綻、新帝国主義に移行。

でも現在重要なのは、帝国主義から世界大戦、の流れ
の再現を阻止することだ。

USAは19世紀以来、対China貿易利権を幻想し、鄧小平は近代以前朝貢国際体制への復帰を夢想した?

「日中韓3国関係を読む」続き。
20世紀USAのAsia戦略は、対中利権獲得を最大目標
にした。日本はそれより下の位置づけ。

1844年、阿片戦争後、英国の威を借りたUSAは、清に
対して不平等条約を押しつけ、それを利用して
Chinese労働者を移民として使役した。

でも、日本がUSAの対中権益拡大を邪魔して、太平洋
戦争、第二次大戦が勃発。

USAに理念の面で本来敵対する共産主義Sovietを自
陣営連合国に引入れて何とか勝利した。

しかしChina共産主義化を許し、対中利権を一時期
手放した。代りに周辺国日本とS Koreaを利権化。

さらに属国獲得を目指し、Vietnam戦争を仕掛けた
けど、挫折。

中共としては、台湾併合が最重要課題。N Koreaは、
台湾問題でUSAから譲歩を引き出すための手駒。

それ故建国直後の困難な時期でも、朝鮮戦争に軍事
介入した。

USAはVietnam占領が失敗したので、北京との国交に
転換。

日本田中角栄政権は、USAが対中正式国交結ぶ前に、
慌てて国交成立させたけど、毛沢東は、角栄の失脚
を予見したらしい。

毛沢東時代とは産業政策を大転換させた鄧小平は、
情実金権を好まず軍人気質。

鄧小平の夢は、東Asiaを近代以前の朝貢秩序に戻す
こと。

江沢民政権は、Korea半島南北和解を支援した。
S Koreaは、南北首脳会談代金として5億$を提供した。

N Koreaによる日本人拉致は不可解だけど、拉致問題
が浮上したのは、金丸元副総理らが進めた対NK国交
交渉を潰すUSAの意向。

小沢一郎代議士が黒幕として成立させた細川政権が
崩壊したのは、対N Korea有事対応が不可能だとして、
USAから引導を渡されたから。

日本の戦前知識人には、高貴者の義務精神や、必敗の戦争

石破茂、西尾幹二著「坐シテ死セズ」
恒文社21,03年9月。

右派論客と当時の防衛庁長官との対談。57年生れ
の石破氏は、10年前後年調の団塊世代への違和感
を表明。

理詰めの政治論を貫くことが出来ず、突然感情論
に飛躍、理解不能だ、と。

西尾氏は、戦後日本の吉田茂Doctrineを批判。
平和憲法を盾に、再軍備要求を値切り、経済力強化
する方針は、対米劣等感と復讐心(ルサンチマン)
の奇妙な組み合せとに発したもの。

政治外交軍事経済の4要素を均衡させる、国家の
あるべき姿から逸脱した。

石破氏は、日本には論理性、客観性、歴史に学ぶ
姿勢、先の大戦への反省が不足、とする。

氏は、徴兵制に関して、日本も承認した国際人権
規約の例外規定を適用すれば、緊急時に発動する
ことは可能とする。
憲法を根拠にした徴兵制否定論は甘い?

西尾氏は、湾岸戦争時、USAで志願兵が殺到した
との話に、負けた、と感じたとのこと。

氏は、9・11攻撃を、日本の特攻隊と類比する言論
(国内では立花隆さん)に反撥。

第一次大戦で、日本が局地戦に勝利して多くの利権
を得たけど、英米はそのくり返しを避けるために、
戦争の基礎空を変更。

でも日本はそれを呑みこまずに、同じやり方で第二
次大戦に突入、それが破滅の一因だとする。

石破氏は、平間元防大教授を援用して、太平洋戦争
時、USA大学生は高貴者の義務の精神で、率先して
参戦したのに、日本の大学生にはそれが不足した
ことへの疑問を表明。

西尾氏は、ひ弱な大正教養主義に、必敗の対米戦争
を阻止する能力が欠けたことを批判。

USAの対中幻想、FDRの狂気とともに、日本の外交力不足が第二次大戦の惨禍をもたらした。

藤井巌喜著「米中新冷戦、どうする日本」PHP

前半は歴史論、第二次大戦、太平洋戦争を指揮
したUSA民主党FDR(Roosevelt)政権の狂気を、
あちらの反対派、非主流派の証言で浮き彫りにする。

「暗黒大陸中国の真実」の著者Townsendは、自国へ
の共産主義勢力の浸透を憂慮しつつ、日中戦争で、
反共の立場から日本を支持。

満州国は日本の傀儡だけど、当時USAはPhilippines
を傀儡化したのだから、USAが日本の満州支配を
批判する資格は無い、と。

当局からにらまれ投獄された。Chineseを無宗教
の嘘つきと批判。

左傾言論界のみならず、USAの宣教師もまた、USA
のChina観を歪ませた。

Chinaを基督教化することが可能と幻想妄想し、
布教活動不振を隠蔽、Chineseの悪を本国に伝達せず。

Townsendの言論は当時も邦訳されたけど、
日本はTownsendの様な人を押し出して、USAの
狂気の世論言論を改めさせるほどの情報戦略力
を持たず。

Fish元下院議員は「日米開戦の悲劇」で、FDR
政権が、議員たちに対日最後通牒を開示せずに
戦争に暴走したことを批判。

Hoover元大統領は、過酷な対日経済制裁、FDRの
狂気を批判。

昭和天皇の、42年2月までの交渉先延ばし提案を
FDRが拒否したことを批判。

もしそこまで待てば、Nazi対Soviet戦でのNazi側
の劣勢が明らかになり、日米戦は回避されたかも、

戦後McCarthyの赤狩りは乱暴だけど、その責任は
戦時中FDR政権の容共姿勢。

元軍人Wedemeyerの回想録では、日本外交に忍耐と
賢明さが不足したことを惜しみ、もしそれがあれ
ば戦争は回避されたとする。

真珠湾攻撃も、戦術のみを見て戦略を無視した愚挙
だ、と。参戦の口実を求めたFDRの戦略を見抜けず。

西尾幹二著「国民の歴史」再読。歴史と呼び得るかやはり怪しい。

西尾幹二著「国民の歴史」以前読み通すのに苦労した
けど、最近文春Onlineで著者の回想記事が発表された
ので、再読。

著者は、特定史観を排し、特定の時代を暗黒化して
否定することを避ける。

豊臣秀吉の晩年の海外侵略は、管見(多数派の見方)で
は愚行だけど、著者は秀吉の壮大な世界構想を褒める。

近世徳川政権の鎖国政策は、豊臣加絵政権に愚行を
反面教師にして成立した面が大きいと見るのが順当
だけど。

近世日本の鎖国は社会発展を遅らせた愚挙だとする
近代主義、進歩主義史観を否定しつつ、著者は、近世
日本には鎖国など無く、日本は近世でも独自の社会
発展を遂げたとする。

管見では、明治維新は、外来西洋勢力に屈したこと
をごまかすために、徳川前政権を過剰批判したことが
問題だと感ずるけど、著者はそこを不問にする。

そして、明治維新とFrance革命を比較し、日本を、
明治維新を遅れた、劣るものとした学者の論議を批判
し、明治維新とFrance革命の同質性を過大評価する。

明治大正期日本が英国の傀儡であり将棋の駒に過ぎず、
厳密な意味での独立国と呼べずとしながら、所謂陰謀
論は採らず。

太平洋戦争、第二次大戦は、日露戦後、USAの過剰な
対日敵視が問題とし、日本側の問題点、戦略戦術の
拙さを棚に上げる。

この本が20世紀日本の政治家で唯一褒めるのが保守
自由主義者石橋湛山。

著者は湛山の敗戦後言論を賞讃するけど、湛山の靖国
神社廃止論には触れず。

自眠党は政党とは呼び難い曖昧集団だと著者は批判。

でも因果性を軽視し、各時代を等しく褒める筆者の
筆法は、歴史とは呼び難く感ぜられる。

平成終了とともに消費税政局も終了し、増税官僚没落するか。

平成時代は、自己流歴史周期に照らせば、戦前
関東大震災から戦後SF講和条約(形式上の独立)
までの時期に相当する。

平成時代は、戦前軍国主義、軍部支配とは別の形
の戦時体制。国際産業戦争や国内税金戦争への対応。

戦後、敗戦国日本は、軍による戦費浪費財政赤字
問題をHyper inflationで解決した。

現代日本は田中角栄系政治によるばら撒き政策に
よる財政赤字が積みあがり、それに対して大蔵罪
務省は、増税、消費税による解決策に固執。

でもこの問題に、今年、新元号元年に恐らく結論
が出る。秋10月に予定される、10%への増税が、
予定通り複数税率で実施され、大混乱大不況を
招くのか。

それとも参院選対策として、あるいは参院選の結果
を受けて、増税断念に追込まれるのか。

増税断念するにしても、予算成立後、増税対応後の
ことで、やはり大混乱。内閣総辞職もの。

大混乱を受けて、来年以降は増税よりも予算削減、
官僚権限縮小を重視する方向に転換せざるを得まい。

敗戦国日本は軍部を解体されたものの、官僚主導
体制を維持した。

現代日本は田中系政治勢力が敗北し、労働者従業員
虐めのBlack企業が横行するけど、安倍政権が愚かな
移民法(事実上の)を成立させた御蔭で、企業主権
が当分は続くのか。

罪務省増税派が、結果として田中角栄系と共倒れにな
る形で衰退すると見たいけど。

消費税を核にした平成税制改革は、消費税による増税
の一方で企業減税を進め、財政再建と企業競争力維持
の二兎を追求したけど、財政再建の歩みは遅く、日本
企業の国際競争力も衰退、一兎をも得ず?

平成年間は、Chinaを利用して儲けた企業も結構ある
けど、今後は対中冷戦化で、企業利益が制約される。
でも企業経営がすぐに民主化されるとは期待し難い。