日本式葬式仏教、贅沢な葬式は衰退、国際標準化へ。

島田裕巳著「葬式は、要らない」幻冬舎新書、10年1月。

日本には独特の葬式仏教があり、日本人は葬式に異常に
費用をかける。他国、国際標準の何倍も。

その日本でも、社会状況の変化により葬式のあり方が変化
しつつある。村落共同体衰退から葬式無用の流れは歴史の必然。

告別式の始まりは、中江兆民に対するもの。自由民権思想家、
唯物主義者兆民は、葬式を拒否した。

 1970年代に、日本独特の社葬、会社葬の慣習が発生。近年は、
結婚媒酌人、仲人が衰退、結婚式も変化しつつある。

日本式の贅沢な葬式の源は、平安貴族の浄土思想にあると見ら
れる。平安貴族は、庭園や阿弥陀堂で現世浄土を表現、代表例
が平等院鳳凰堂。

現代葬儀の祭壇は、現世浄土を簡略化したものとされる。遺族
は見栄で、高めのものを注文する傾向があるとのこと。

禅宗は儒教の祖先崇拝と融合し、修行中に死亡した僧侶のため
の葬式を、在家信者に拡大した。日本人のお墓参り教、祖先崇
拝は、儒教と共通する。

近世徳川政権は、基督教や日蓮宗不受不施派を禁止しつつ、全
ての人を形式上仏教者にした。


寺の壇家になることは、本来贅沢なこと。上層階層のみに許さ
れた特権。それには相応の負担が必要。

特定の寺と檀家として関係を結ぶならば、その寺から戒名を
授かり、戒名料を納める(布施をする)ことは義務。

それが嫌なら檀家を辞める。現在は辞める自由がある。寺の側
がきちんと説明すれば、戒名料が高過ぎるとかの不満、批判は
避けられる筈。

近世寺請制度で、在家戒名が一般化。著者は、日本武士の改名
や、伝統芸能での襲名が、戒名(俗名からの改名)と関係ある
としたけど、天皇の諡号(死後改名の源?)には言及せず。

戦後都市化で高位の戒名を求める風潮が生じた、一般墓地での
調査では、戦前院殿戒名は2割程度、それが戦後に激増、平成
では3分の2。

(院殿戒名は本来、寺に建物を寄進した人に授けられるもの)
墓石を立てることも、本来は贅沢。

社会変化や高齢化等により、葬式が脱贅沢化、直葬と呼ばれる
簡素な形式が普及しつつある。それがほぼ国際標準。日本の葬
式も、今後国際標準化すると見られる。


0 件のコメント:

コメントを投稿